365体育博彩_365体育投注【中国科学院】

图片

読み物

5月2日(火)アセンブリーアワー講演会「失敗と発見(ゲスト:三宅 唱氏)」レポート

アセンブリーアワー講演会は、京都精華大学の開学した1968年から行われている公開トークイベントで、これまで54年間続けてきました。分野を問わず、時代に残る活動や世界に感動を与える表現をしている人をゲストに迎えています。
 
 
2023年5月2日(火)は、映画監督である三宅唱さんを迎え、「失敗と発見」をテーマに講演会を開催しました。三宅監督は、2012年公開の『Playback』がロカルノ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、高崎映画祭新進監督グランプリ、日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。『きみの鳥はうたえる』(2018年)も高い評価を集め、2022年に公開された『ケイコ 目を澄ませて』はベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門に正式出品されたほか、キネマ旬報ベスト?テン第1位日本映画作品賞、毎日映画コンクール日本映画大賞、高崎映画祭最優秀作品賞などを受賞。2024年には次作『夜明けのすべて』(主演:松村北斗、上白石萌音)が公開予定です。
 

「失敗と発見(ゲスト:三宅 唱氏)」講演会レポート

劇場公開デビュー作『Playback』で国内外から注目を集め、新進気鋭としてキャリアを積んできた三宅監督。聴覚にハンディキャップを持ちながらプロボクサーとしてリングに立ち続けた小笠原恵子さんに着想を得た最新作『ケイコ 目を澄ませて』では、コロナ禍の東京の下町を舞台に主人公?ケイコの生き様と心情を丁寧に描き出し、大きな評判に。現在も異例のロングラン上映が続いています。
 
そんな日本を代表する映画監督のひとりとなった三宅監督ですが、今回の講演会で最初に語ってくれたのは、「いかに私は『失敗』してきたか」ということでした。
 

三宅監督にとって長編第一作目となった『やくたたず』の撮影時のこと。当時、25歳だった三宅監督は「これで勝負に出るんだ」という強い覚悟と意気込みで撮影に挑みましたが、「撮影序盤から失敗」してしまったそう。それは「主人公の高校生3人がバスに乗り遅れる」というシーン。というのも、バスの発着時刻を調べ忘れていたうえ、冬でみんなが予想以上に寒がったり、すぐに陽が落ちてしまったのです。
(写し出されたスライドの一部 / 2009年12月『やくたたず』撮影序盤の場合)
しかし、この「失敗」から「発見」が生まれた、と三宅監督は言います。撮影がままならないなかで、「間に合わない」ことで始まる物語だと再解釈し、「間に合わなさを描く」ことに変更。その結果、少年たちがカメラに向かって走り、途中で走るのを諦めるというワンカットのシーンになったと言いますが、その完成版を見ると、少年たちの焦燥感が表現された、実に映画的な印象に残るシーンとなっていました。この「失敗」から三宅監督が「発見」したのは、「これさえ表現すればなんとかなるだろう、というものだけに向けて撮っていく」ということだったと言います。

(写し出されたスライドの一部 / 2011年6月『Playback』撮影最終日の場合)
このほかにも、自身の監督作品である『Playback』『きみの鳥はうたえる』『ケイコ 目を澄ませて』、音楽ドキュメンタリー『THE COCKPIT』の撮影時や編集中における「失敗」と「発見」のエピソードを通じ、「生もの」である映画づくりの面白さを存分に語ってくださった三宅監督。質疑応答の時間にもたくさんの質問の手が挙がりましたが、そこでも興味深いお話を多く聞くことができました。

たとえば、「映画をつくるなかで『これだけは伝えたい』というような大きなテーマはありますか?」という質問に、三宅監督は「言葉にすると照れくさいような話なので、ちょっと恥ずかしいんですけれども、大きく2つあると思います」と前置きし、このように答えました。
「ひとつ目はシンプルに『映画を映画館で観るのはとても面白い』ということを伝えられたら最高だということ。ふたつ目は、『人生は1回しかない』ということが、自分が撮っている映画のひとつひとつのカットのベースになっていると思います。目の前で起こること、瞬間瞬間の出来事はたった1回しかないという、そのことの重み、そこに立ち会える喜び。それがなければ、映画をそもそもつくっていないと思いますね」

また、駆け出しの映像ディレクターたちとの仕事に携わっているという方からは、「三宅監督は、駆け出しの時代にどんなふうにモチベーションを上げてこられましたか?」という質問が。すると三宅監督は、「後先を何も考えず、ただ映画のことだけを考えていたというか……」と返答。続けて、こんなことを語ってくれました。
「自分にとっての映画というのは“自分自身の世界をつくる”というよりも、世の中との関係のなかに映画があると考えていて。娯楽的な意味でも社会的な意味でも、いろんな面で何がいま映画として面白いのかを考えるためには、やっぱり世の中のことを知らなきゃいけないですよね。だから、いま世の中で起きている出来事から目を逸らさずよく見てみる、この時代に生きている自覚みたいなものを大事にしていたように思います」

会場で寄せられた、たくさんの質問に対し、ひとつひとつ丁寧に答えてくださった三宅監督。失敗と試行錯誤を重ねることで「発見」が生まれるというお話は、学生たちにとっても大切なヒントになったことでしょう。
このたびは、貴重な時間をありがとうございました。
 

お問い合わせ先 CONTACT

京都精華大学 広報グループ

〒606-8588 京都市左京区岩倉木野町137
Tel:075-702-5197
Fax:075-702-5352
E-mail:kouhou@kyoto-seika.ac.jp

※取材いただく際は、事前に広報グループまでご連絡ください。

SHARE